
「今日中にテキストを開いて復習してね、もし弾けたら1回でいいから弾いてね」たまにこのような声かけをすることがあります。ピアノを弾く行為は、さまざまな感覚器官と運動神経を使います。練習を多くするほど力は抜けてきます。それは冗長度にも起因します。ピアノを弾くことは身体を使う以上、練習は必要です。さらに学習した多くの情報量を瞬時に脳に伝達させるため練習しないで上達はありえないことであり「ピアノのおけいこ=れんしゅう」は昔から当たり前のことです。この当たり前こそが難しいと思われるかもしれないのですが。ところで、「練習」は重ねるほど冗長度は高まり不必要な神経伝達は行なわれなくなってきます。そのようなことを長年積み重ねていると脳内の左右をつなぐパイプの情報処理能力がとてもスピーディになります。ピアノをよく弾くことで頭の働きもよくなることは今や医科学的にも証明されていますがそのような効果を期待するには子供の頃からの訓練が重要になります。頭の働きをよくするためにピアノを弾くわけではないですが魅力的なエビデンスなのです。こちらの土地で指導をはじめてから、習い始める時にご自宅にピアノもなく「のんびりでいいので・・・」「ドレミファ・・だけでもいいから」と仰る保護者の方が時々いらっしゃいまして驚いたことがありました。「ピアノを習っていた」事実のみが欲しいのでしょうか・・?申し上げにくいですが初心者で週に1回のレッスン時にだけピアノに触れても殆んど進歩しないと考えた方がよいでしょう。ピアノの鍵盤を叩いたり触りたいだけなら楽器店に行ってピアノに触れ自由に音を出させてもらった方が賢明です。
導入時期の特にお子さんの場合、ピアノは特に新しいことが次から次へと出てきます。上の図の「忘却曲線」にもあるように「休みの日にまとめて練習」はオススメではありません。ピアノを始めたばかりだったり、習い始めて数年くらいでは「ピアノ脳」は確立されていません。ある程度の年齢ならば、ご自宅で楽譜を開けばどこをどのようにアドヴァイスされたかがわかりますし修正もすぐできます。しかしながら、新しい情報は感覚的に物事を把握する年令の場合は多く接するものとそうでないものの入れ替わりが激しく脳の代謝が活発です。レッスンは週1回ですし小さいお子さまの場合、「レッスンが終わった」と同時に忘れてしまうといっても言い過ぎではないのです。
音符は文字と同じく単なる記号です。しかし言語とは異なります。常に文字を書いたり話したりしているわけではないので、文字と同じように音符に多く接すればするほど、また楽譜の音符をピアノの鍵盤に置き換える作業をすればするほど、ピアノに対する冗長度は高まるのです。1週間はあっという間です。習い事に追われているような昨今のお子さまたちですが、時間をうまく使って「毎日生活の中にピアノのための時間」を数分でよいので取り入れてほしいと考えます。そのように時間を有効に使う事を習慣化することは、とても有効かつ有意義なことであると思っております。