おそらく一昔前、とにかく「ピアノを習うのだから練習をしないといけない、そして、間違えないように弾けるようになるまで家で練習してレッスンに行くものだ」とされていました。練習しているうちに身につき、やがて続けていれば、ある程度は弾きたい曲の楽譜があったら自分でポロンポロンと読譜を進め、奏でることができるようになっているものだ、とされていました。あくまでも、このような事象は一般的なものであったとは思いますが、今はその自然発生的に任せたような「ゆとりのある考え」は通用しません。また、情報過多な時代を生きているので、自分たちにとって都合の良い情報をキャッチし、効率よく処理し結果を出そうとする習慣が身につきやすくなっています。

 家庭内での親子関係しかり、習い事の多さ、住宅事情、教育状況などさまざまな環境変化により多様化し、個人差も顕著になっているように思います。そのため「ピアノのあそび時間的余裕」もなく、「どうやったら弾けるのか?」ということに言及する必要性を度々感じることがあります。その理由を説明するためにレッスンでは「リンク」という言葉を使って説明させていただいているのです。これは結局のところ「どのように楽譜の通りに音を出せるのか?」ということの説明であり、音楽を奏でる前段階でもあります。それこそひとりひとり違いがあるので、レッスンの課題を終え、強化すべきことを都度、あるいは回数を重ねながら、とにかく色々な側面から手を変え品を変えアプローチしています。そうして「リンクの先のつながりを増やすこと、また早くしていくこと」がピアノを楽しく弾いていくためにまず大切だと考えています。

ピアノを楽譜を見て弾けるようになってくるということは、目、耳、皮膚感覚、運動や情動などの感覚、感情、神経のつながりが早く、コントロールできるようになってきます。そのため、ピアノを弾ける人は脳内マルチタスクが自然にできるようになるため、ピアノ以外の他の場面でも生かされてくるのです。ところで、ChatGPTの時代が到来しました。機械がなくなったら空っぽの人間と化さないよう、また明るい未来のためにもしっかりとした自分軸と思考脳力を持つためにも、どんどんピアノを練習して上達してほしいと願ってやみません。